原田晃宏さん
原田酒造合資会社 代表社員

〒470-2104
愛知県知多郡東浦町大字生路字坂下29番地
電話 0562-83-5171
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米作りと酒造り

知多半島の1つのブランドとして、酒造りに適したお米を作ってます。

今年も12月5日(日)に地元知多半島の酒米『若水』から生まれた新酒の披露を兼ね“蔵びらき”を開催します。酒米は米粒の真ん中に「心白(シンパク)」という澱粉の層がある米がいいんですよ。山田錦という米は、心白が真ん中にポツンとあり、米粒が大きくて精米しても割れにくく、上手に発酵する米です。普通の米にそれがあると、2等米になってしまう。だから山田錦は値段も高く、高級酒の原料として重宝されています。

大手は安く作れて比較的発酵に向いた米を確実に研究しています。新潟をはじめ他県では中小等でも当たり前のように農家と契約栽培をしています。当蔵では20年ほど前から県内産の『若水』を原料として使用し、『衣が浦若水』というブランドで純米酒を販売し続けてきました。5年ほど前から知多半島産の契約栽培米『若水』を3社で使い始め、年間200俵しか作れなかったのですが、今では5社で870俵になりました。2012年には1,400俵を目標にしています。本当はもっと増やしたいけど、田んぼがないんです。作り手がいない。スケールメリットがないと、農家が大変ですからね。今はうちが事務局になって、農家や酒蔵とやり取りをしています。

当蔵でも、地元産『若水』同様に美味い酒を醸すには良質の米でなければならないという観点から、17年ほど前より富山県“JAなんと”から南砺産の「五百万石」購入し使い続けています(平成の大合併前は城端産)。JAなんと管内の酒米生産者とは購入当初からずっとお付き合いをしています。南砺市は行政、JA、生産者が一丸となって今後の国際情勢を見据えて我が国の農業の将来を真剣に考え、日本一米づくりに熱い情熱を持って農業に真剣に取り組んでいる地域です。3年前から南砺産『山田錦』の生産も始まり、当蔵でも原料米として使用しています。南砺産『山田錦』といっても今はまだマイナーな産地にすぎません。しかし、いつの日か兵庫や阿波と並ぶ名産地となるよう生産者やJA、南砺産『山田錦』をサポートする蔵元たちと共に健闘中です。

そのように知多半島産『若水』、南砺産『五百万石』や『山田錦』など、定期的に現地へ足を運び栽培の状況を把握し生産者と酒を酌み交わし情報を交換し「お互いの顔の見える酒造り」は、酒を造り販売する上で大きなプレッシャーにもなります。しかし、その代償としてお客様からの「食の安全」という面からの信用を得ることができます。当蔵は創業以来155年間、地元知多半島の皆様に育てていただきました。そして、これからも知多半島発の酒を知多半島の蔵元として全国で通用する酒を醸し、一人でも多くのお客様に納得して飲んでいただける酒をご提供することを目指します。

知多半島発の酒造り

世界の中に日本という国があります。日本の中に愛知県があり、知多半島があり、東浦がある。東浦は世界の中のピンポイントです。東浦のことだけを見るよりも、もう少し広げて隣の市町も含め、知多半島全域ぐらいの広い目線で、モノが見えるといいのではないでしょうか。知多半島が1つになってという流れがきてますから、地域と共にというなら、30~40代の若手と一緒に活動するといいでしょう。

商工会等のいろんな役を離れたこの機会に、自分の頭の中をリフレッシュさせないといけません。経験したものを全部忘れるという意味ではなく、今まで経験し身に付けた知識や感性をベースにして、必要なものは残して新しいものを上に積んでいくのです。Innovation(創造的破壊)を自分自身の中で行っていくのです。その作業をしていくには、もっと世の中に出て行かないといけません。

愛知県の酒造組合は、組合員数で40場ぐらい、酒を造っている所で30場ぐらいしかないですから、大体顔見知りです。ところが中央の方へ行くと、全然知らない人ばっかりじゃないですか。例えば青森の蔵元とか。初めて聞く話も沢山あるので、とても面白いですよ。

動きを見る

東浦の看板を背負っていた分、壁になっていた部分もあります。それは自分の行動範囲を自分で狭くしていた部分もあったと思うんです。日本は東京を中心に物事が動いてますから、東京へ行ったら一人でも多くの人と出会い、そして情報を仕入れて地元へ持ってこないといけない。

東京では大学生活、酒販店(業務卸)での勤務で計8年間暮らしていました。あの頃、世の中の動きが大変だなと思う出来事が、5年10年と後れて地元で起きてました。そういえば前に東京であったな、と思える動きが山ほど出てきます。なので、まず東京を含めた首都圏の動きを見た方がいいんです。現代の日本において、何といっても東京は日本の都です。人も物も金も情報も、あらゆるものが集まりますから。

地方にいる人間は、中央を見ないといけません。イギリスには “Country Gentleman”という言葉があります。それは単なる「田舎の紳士」ということではなく、いつもは地方に住んでいるんだけど、常に中央に目を光らせている人たちのことです。私たちの場合、イギリスにおける貴族階級の人々とは立場が違いますから政治的なものではありませんが、地方で活動をしていても、常に目線は中央に向けておき、中央での動きに変化が現れた時は、的確に対応できる体制を組んでおく努力が必要でしょうね。