中瀬 進吾さん
ナカセ農園 代表

〒470-2102
愛知県知多郡東浦町緒川膝折10
電話 0562-84-0015
FAX  0562-84-0057
https://nakasenouen.com/

仕事

大学では農学部で米を専攻して、卒業後は東京の製薬会社に入りました。

仕事内容は、開発した薬を病院の患者さんに使用してもらい、実際に効いたか副作用があったかというデータをまとめて国に申請し、通れば実際に薬として販売できるという、「治験(治療試験)」をしました。

新しい薬は次々と出てくるんですよ。新規の薬の元になる物質が見つかったらスクリーニング(ふるい分け)にかけ、残ったものが薬になる。最初に見つけてから薬を販売するまで20~30年かかるし、実は薬にならなかった物の方が多いんですね。

学生のころは農業に対してそんなに思い入れはなかったけど、製薬会社の仕事を一生やるのかなと考えたり、どこかで農業をやりたいという思いもありました。しかし農業といってもいろいろあるし、幅広いじゃないですか。何をやっていいのかわからないので、ただ漠然と思っていました。

農業フェア

新規就農といって、農家じゃない人でも新しく農業につきたいという人が増えてきました。農業をやりたい人に農業の就職先を斡旋したり、紹介したりという催しがけっこうあったんですよ。そういうのに毎年顔を出していたら、愛知県の農業会議の人と知り合い、『碧南市にいい農家がいるから会ってみなさい』と紹介してもらったんです。それがにいみ農園という、水耕栽培でミニトマトを作ってる大きな所でした。

話しを聞きに行きましたが、「やめとけ」と言われました。実家が農家じゃないし地盤もないし、ただでさえ農業なんて厳しいんだから、今の仕事と比べてもやめておけ、と。それでも碧南市のトマト屋さんの話は、今までとは違う何かを感じたので、勉強をさせてもらうようお願いをして研修に行ったのが、この世界に入ったきっかけです。

「何を作るか」よりも「どうやって作るか」

農業に対して前向きな人で、やり方によってはきちんとできるんだよ、ということを教えてもらいました。1年半ほど毎日通い、それと同時に独立した時の場所を探しました。

地元が半田市なので半田から探しましたが見つからない。見ず知らずの人に土地を貸すというのは、なかなか無いんですね。ましてやハウスをやるために貸してくれとなれば、20年とかそういう単位で貸すことになるので、探すのは難しかったです。

もともと農家であれば、そういうつながりもあったのかもしれないけど、無いので行き当たりばったりというか、空いてる土地があれば地主さんを探してました。阿久比町でも探して、徐々に北上して東浦に来ました。今、売り場になっている所が第1号に建てたハウスです。

ハウスの中は全部で6区画あって、平均して年中収穫できるよう区画の植える時期を1ヶ月ずつずらして作っています。3~4月は直売へ来てくださるお客さんが1番多い時期で、5~6月は成長が早くて収穫量も1番多くなる最盛期です。3~5月が1番甘くて美味しいですよ。トマトは嗜好品でもあるので季節が暖かくなると食べたくなるし、お弁当作りが始まるこの時期は、売り切れることも多く需要が足りません。

農業の1番弱いところは、実際に食べてくれるお客さんのことを意外に考えてないことじゃないかな。
野菜を作って農協に出したら終わり。その後どういう人が買って食べているのか、そういうことに頓着しておらず作るだけ。やはり食べて美味しいものを作る。そこからスタートするものだと思います。
直売では実際に買って食べて感想を言ってくれるので、1番よくわかります。お客さんに美味しかったよと言われるのが1番嬉しい。

美味しいトマトを作るこつは、毎日見ることかな。
水が足りないな、肥料のこういう成分が不足してるな、寒がってるなとか、だいたい木を見れば状態がわかります。それは農業の人は皆一緒だと思う。トマトは生き物なので日々変わります。表情が出てくるので、表情に合わせていかに変えてあげられるかで違ってくる。

農業は、まだまだ正しいやり方が整理されておらす、進歩も遅れてると思う。やればやるほどわからなくなる部分があるから面白いし、終わりはないと思う。畑違いの人が背水の陣でやると、いいのかもしれない。いろんな物を作る人が増え、東浦で作った農作物は美味しいぞ!って『東浦産』がブランドになったら面白いですね。